ソーシャルスタートアップ成長支援事業

創業推進係長 松尾彩佳さん

福岡市 経済観光文化局 創業支援課 創業推進係長 松尾彩佳さん

福岡市では、ふるさと納税の寄付金の使い道として、「まち」、「文化とスポーツ」、「自然」、「暮らし」をテーマに39種類(令和6年4月現在)の応援プロジェクトを用意しています。今回は、令和6年7月から新たにプロジェクトに加わる「ソーシャルスタートアップ成長支援事業」を紹介。地域や社会の課題解決に熱い想いをもって取り組むソーシャルスタートアップに対し、ふるさと納税を活用した支援を行う全国的にも新しい取り組みです。

「ソーシャルスタートアップ成長支援事業」に携る、経済観光文化局 創業支援課の松尾彩佳さんに話を聞きました。

――ふだんはどのような仕事をしていますか。

創業支援課では、福岡市が掲げる「新たな挑戦を応援するスタートアップ都市づくり」の実現に向けて、創業しやすい環境づくりや、スタートアップの成長支援を行っています。 

福岡市では、平成24(2012)年に「スタートアップ都市ふくおか宣言」を行い、まだ「スタートアップ」という言葉が社会で認知されていない頃から、先進的にスタートアップ支援に取り組んできました。平成26(2014)年には国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」の指定を受け、福岡市独自施策と規制緩和を組み合わせながら、国内外から新しいチャレンジに取り組む方々を呼び込み、福岡で活躍できる環境を整えてきました。また平成29(2017)年には、官民協働スタートアップ施設「Fukuoka Growth Next」を設置。福岡市内で数多くのスタートアップが誕生し、切磋琢磨しながら成長を続けています。 

私は、スタートアップ支援に先進的に取り組む自治体で構成された「スタートアップ都市推進協議会」の事務局として、スタートアップの販路拡大等を目的としたビジネスマッチングイベントの企画運営をしています。また今年度から新たに地域や社会の課題解決に取り組む「ソーシャルスタートアップ」を、ふるさと納税を活用して支援するプロジェクトを担当することとなりました。 

――寄付金の使い道「ソーシャルスタートアップ成長支援」プロジェクトについて教えてください。

革新的なビジネスを生み出す「スタートアップ」のなかでも、人々の持続的でよりよい生活の実現に向けて、社会や地域の課題解決をビジネスと両立しながら取り組むスタートアップを「ソーシャルスタートアップ」と呼んでいます。環境問題や人口減少などさまざまな課題を抱える現代社会に必要な存在でありながら、社会課題解決と収益性の両立が極めて難しいことから、創立当初の資金繰りに難航し、場合によっては廃業することもあるのが実情です。

福岡市では、そういったソーシャルスタートアップを社会全体で支えていくことを目指し、ふるさと納税制度を活用して応援するプロジェクトを立ち上げました。令和6(2024)年4月に支援対象となるスタートアップの募集を行ったところ30社以上の応募があり、民間の有識者による選定を経てこの5月に10社を認定しました。各社がめざす課題解決は、環境問題や教育、子育て支援、「誰もが生きがいを持って生きられる世界」の実現など多岐に渡ります。 

海岸の岩場に置かれたドッグフードの写真
沿岸の海藻が減少する“磯焼け”の原因となる未利用魚(イスズミ、アイゴ)を活用したドッグフードを開発する「オーシャンリペア株式会社」
幼児が食事をしている写真
温めるだけで食べられる、栄養バランスの取れた冷凍幼児食を手がける「株式会社Oxxx」。
大豆ミートのパッケージが籠に入っている写真
環境負荷の軽減に繋がるという考えのもと、おいしく食べられる大豆ミートブランドSoycle/ソイクルを展開する「株式会社上向き」
本屋とのコラボイベント様子の写真
学校の魅力と可能性を社会にひらき、「学校×企業×●●」のコラボを創出し続けることで、教育の在り方の変革を目指す「エデュポルテ株式会社」

「ソーシャルスタートアップ成長支援」プロジェクトはクラウドファンディング方式で寄付金を募ることも特徴のひとつです。通常のふるさと納税では、寄付者は返礼品を選んだあとに寄付の使い道を選択しますが、本プロジェクトでは、各社の取り組みや熱い想いが詰まった紹介記事として、まず「寄付の使い道」を目標額とともに提示、その想いに共感してくださった方が寄付を行い、最後に返礼品を選ぶといった流れになります。使い道を最初に選ぶことで、寄付者の方がもっと能動的に自分の税金の使い道を指定できるようになりますし、各社の取り組みへの共感や賛同も大きくなると考えています。

プロジェクトに認定されたスタートアップの中には、その製品が返礼品となっている企業もあります。そしてこの寄付をきっかけに、熱い想いを持って取り組む人たちを社会全体で支えていくという機運を高めていきたいと考えています。 

GG.SUPPLY株式会社
都会の畑から収穫、新鮮野菜を30分以内に直接デリバリーを叶える「GG.SUPPLY株式会社」。返礼品として選べます。
ローカルフードサイクリング株式会社
コンポストの開発販売、半径2km圏での持続可能な栄養循環を構築する「ローカルフードサイクリング株式会社」。返礼品として選べます。

――寄付金はどのように活用されるのでしょうか。

集まった寄付金を原資としてスタートアップの方に補助金を交付し、経営基盤の強化のために必要な取り組みを行っていただきます。 

寄付者は認定ソーシャルスタートアップの中から応援したい取り組みを選ぶことができます。寄付を集めることも起業家の力です。今回の「ソーシャルスタートアップ成長支援」プロジェクトを通じて、自社の取り組みを分かりやすく発信する営業力を磨きあげ、寄付者を自社のファンに繋げるなど、起業家として成長するのに必要な力を身につけていただきたいです。 

――これからの取り組みについて展望を教えてください。

これからの世の中で、社会課題は複雑になり多様化していきます。人口減少により行政の人的リソースや財源が限られるなかで、こういったプロジェクトを通して、スタートアップに地域や社会の課題解決の担い手の一翼となっていただけると嬉しいです。そして想いをもった起業家を社会全体で支える仕組みを作り、起業家の持続的なビジネスを可能にすることで、社会課題を持続的に解決できるのではないかと考えています。 

――寄付者の方にメッセージをお願いします。

今回認定した10社のスタートアップは、自身や身近な人の悩みの解決のために取り組む方、環境問題のような未来を担う子ども達のために取り組む方など、その課題意識はさまざまです。福岡市内によらず、市内外の方たちのこれからの生活をよ良くしようという取り組みばかりです。私も認定スタートアップの方たちと何度もお話しする機会がありましたが、いつもみなさんの「社会をよくしたい」という熱い思いに驚かされています。ぜひこちらのサイトで各社の熱い想いをご覧のうえ、応援していただけるとありがたいです。 

 

▼画像をクリックで各社のプロジェクトをご覧いただけます。

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お問い合わせ先

経済観光文化局創業支援課

TEL:092-711-4455

E-mail:startup.EPB@city.fukuoka.lg.jp