福岡城整備基金(福岡みんなの城基金)

福岡市 経済観光文化局 文化財活用部 史跡整備活用課 福岡城跡整備係長 大塚紀宜さん

 福岡市では、ふるさと納税の寄付の使い道として、36種類(令和5年7月現在)の応援プロジェクトを用意しています。そのなかの一つ、「福岡城整備基金」は、「福岡みんなの城基金」という愛称で親しまれているプロジェクトです。いただいた寄付金は、1601年に黒田長政・官兵衛親子によって7年の年月をかけて築かれた福岡城の整備に使われています。

 今回は「福岡城整備基金」に携わる、福岡市 経済観光文化局 文化財活用部 史跡整備活用課の大塚紀宜さんに話を聞きました。

――ふだんはどのような仕事をしていますか。

 福岡は国内でも有数の遺跡を有する場所です。大陸から近い立地ということもあり、古くは縄文、弥生時代からさまざまな文化が伝わってきた場所でした。福岡市内だけでも遺跡の数は1,000以上に及びます。なかには、日本の歴史を語るうえで欠かせない重要な遺跡もあり、そのような遺跡は国や県、市の指定文化財や史跡となっています。それらの指定文化材を整備・活用するのが文化財活用部 史跡整備活用課の主な業務です。私は文化財の専門職員で、福岡城を担当して4年目になります。

――寄付金の使い道「福岡城整備基金(福岡みんなの城基金)」プロジェクトができた経緯を教えてください。

 「福岡城整備基金(福岡みんなの城基金)」は、平成26(2014)年度に策定された「福岡城跡整備基本計画」に併せて設けられたものです。「福岡城跡整備基本計画」は、福岡城を福岡市の歴史的、また文化財保護の象徴として保存や管理を進め、観光やまちづくりなどへの活用を市民のみなさんと一体になって推進するための計画です。整備にかかる費用についても、市の財源に加え、広く一般の方にご協力いただきながらみんなで整備していきたいという思いで「福岡城整備基金(福岡みんなの城基金)」を立ち上げました。

――寄付金はどのように活用されているのでしょうか。

 いただいた寄付金は、主に福岡城跡の櫓や門など、歴史的建造物の復元整備にかかる経費の一部として使用します。今回、令和5(2023)年2月から始まった「潮見櫓」の建物復元工事に、初めて寄付金を充当させていただく予定です。

 「潮見櫓」は、福岡城の北西の隅にあった櫓です。江戸時代当時は名前の通り海を眺められる場所であったため、海上の監視を行ったといわれています。明治41(1908)年には「崇福寺」(博多区千代)に移築され、仏殿として使用されていました。平成3(1991)年の調査で、小屋裏から見つかった棟札により、この崇福寺に移築された建物が「潮見櫓」だということがわかり、移築復元をめざすこととなりました。それ以来、建物に使われていた梁や柱、瓦などの部材を大切に保管し、ようやく復元工事が始まったのです。

――「潮見櫓」の復元工事はどのような状況ですか。

 石垣の復元が終わり、令和7(2025)年春の完成を目指して、建物の復元工事が始まりました。現在は櫓を建てるための基礎工事を行っています。基礎が完成すると、いよいよ建物の工事が始まります。実際に使われていた部材を使うだけでなく、新しい部材で補う部分もあるのですが、現代の工法ではなく福岡城が作られた江戸時代当時の工法で再現します。例えば、壁は竹を組んで下地を作り、藁をなじませた壁土をぬり、漆喰で仕上げていくのです。職人さんの技術の粋を集めて造られる「潮見櫓」は、単なる建物ではなく工芸品といっていいほどのものに仕上がると思います。

 明治通りと昭和通りが交わるあたりから福岡城跡を眺めると、「潮見櫓」の石垣や建設地を見ることができます。建設中は覆いをかけるので中は見えませんが、工事が進んでいる様子を感じていただけると思います。

――「潮見櫓」の復元にかける想いを教えてください。

 福岡城の中にはかつて47の櫓があったと記録されていますが、実際に残っているのはごくわずかです。国指定史跡の中で建物を復元するには確実に同じ場所、同じ形である確実な根拠が必要とされます。「潮見櫓」は、建物の正確な位置や形がわかる資料が残されていました。とはいえ、「崇福寺」からの移設から約30年、文化庁の審査が下りるまで約10年と長い年月をかけてようやくここまでたどり着きました。本当に貴重な機会なので、私も市民の皆さまと同じように、完成をとても楽しみに工事に携わっています。

――寄付者の方にメッセージをお願いします。

 復元に繋がる資料や部材が残っていたことに加え、たくさんの方々から寄付をいただいて費用的な協力を得られたことが復元への大きな後押しになりました。寄付をいただいた方のうち、希望された方の芳名板を福岡城・鴻臚館の案内処「三の丸スクエア」に掲示していますので、ぜひご覧ください。福岡市や近郊の方はもとより日本全国のご協力くださった方のお名前を見ていると、どれだけ多くの方が期待を寄せてくださっているか改めて感じずにはいられません。

 福岡城が好き、お城が好き、福岡が好き。そういった皆さまの気持ちを大切にしながら「潮見櫓」の完成に向けて、着実に歩みを進めていきたいと思っています。これからもご協力よろしくお願いいたします。

お問い合わせ先

経済観光文化局史跡整備活用課

TEL:092-711-4784

E-mail:shiseki.EPB@city.fukuoka.lg.jp